採用担当として求人票を作っていた話
採用担当の仕事のなかに、求人票の作成という業務があります。ここだけの話——求人票って、ある程度「魅力的に見せる」ために書くんです。嘘はつかないけど、ネガティブな部分は書かない。曖昧な表現で都合よく解釈させる。これは採用担当なら多かれ少なかれやっていることだと思います。
[写真:求人票の作成画面(求人サイトの管理画面イメージ)]
もちろん全ての会社がそうではないし、誠実に書いている求人票もたくさんあります。でも転職活動中のワーママが「この求人いいな」と感じて応募した先が、入社後に「こんなはずじゃなかった」という職場だった、という話はあちこちで聞きます。
採用担当として求人票を作る側にいた経験と、転職活動をする側になった今の視点から、「ここは要注意」という危険サインを正直に書きます。
NGサイン①「残業ほぼなし」「残業少なめ」という曖昧な表現
これ、一番頻繁に見るやつです。求人票に「残業ほぼなし」と書いてあったのに、入社したら月20〜30時間は普通にある、という話を何度も聞いてきました。
採用担当として正直に言うと、「残業ほぼなし」「残業少なめ」という表現は、書いた担当者の主観です。月10時間なら「少なめ」と感じる人もいれば、月30時間を「ほぼなし」と表現する人もいる(実際にそういう求人票を見たことがあります)。
求人票で残業に関して信頼できる書き方は、「月平均残業時間:○時間」という数字です。この数字がある求人票は、少なくとも残業時間の透明性を意識している会社と言えます。数字がない場合は、面接か書類選考通過後に直接聞くことをおすすめします。「平均的な残業時間を教えてもらえますか」と聞くのは全く失礼ではありません。
[写真:求人票を比較しているスマホの画面]
NGサイン②「育児理解あり」「子育て支援◎」のバズワード
「育児理解あり」「子育て支援◎」「ママに優しい職場」——これ、書くのに何の根拠も要らないんです。採用担当として求人票を作るとき、「育児理解あり」という表現はほぼ誰でも書けます。実態が伴っていなくても。
信頼できるのは「育休取得率○%」「男性育休取得率○%」「育休復職率○%」のような具体的な数字がある場合です。または「小学生以下のお子さんを持つ社員が在籍○名」という実態情報。これがある求人票は、「制度があるだけでなく、実際に使っている社員がいる」という証拠になります。
厚生労働省の「えるぼし認定」や「くるみん認定」を取得している企業は、一定基準の育児支援制度を設けていることが認定要件になっているので、これらのマークがある場合は信頼度が上がります。ただ認定イコール「現場でも理解がある」とは限らないので、面接での確認は必要です。
NGサイン③「フレックスタイム制(コアタイムなし)」の落とし穴
「コアタイムなしのフレックス制で自由に働けます」という求人、ワーママには魅力的に映りますよね。実際に柔軟な働き方ができる会社もあります。でも、落とし穴があるケースも少なくありません。
採用担当目線で言うと、「コアタイムなしのフレックス」は制度として存在しているだけで、「実際にそれを活用している社員がいるか」は別問題です。チームの慣習として「10時〜18時は基本的にいる」という暗黙のルールがある職場で、フレックスを実際に活用しようとすると「空気が読めない」と思われるケースがあります。
確認ポイントは「実際にフレックスを使っている社員が何人いるか」「1日の最短・最長勤務時間の実例」です。面接の逆質問で「フレックスを実際に活用されている方の働き方を教えてもらえますか」と聞くと、具体的な情報が出てきます。曖昧な返答しか来ない場合は、制度が形骸化している可能性があります。
NGサイン④「女性が活躍」「ダイバーシティ推進」だけで実績なし
「女性が活躍できる職場」「ダイバーシティ推進中」という表現も、求人票では頻繁に見ます。でもこれだけでは実態がわかりません。
採用担当として正直に言うと、「女性が活躍」は会社の方針というより「採用担当者の願望」として書かれている場合があります。「うちの会社でも女性が活躍してほしい(いまはまだそうじゃないけど)」という気持ちで書いてしまっている人もいる。
信頼できるのは「管理職に占める女性の割合:○%」「直近3年で昇進した女性社員数○名」のような実績数字です。または「女性の平均勤続年数:○年」という数字——これは会社が女性を長く働かせられているかどうかの指標になります。
NGサイン⑤「在宅勤務可」の「可」の意味が曖昧
「在宅勤務可」という表現、実は幅が広すぎて意味がほぼないんです。週5日のフルリモートが「可」の場合もあれば、「月1回まで可」が「在宅勤務可」と書かれている場合もある。
私が採用担当として関わった求人票でも、「在宅勤務可」の意味を明確に定義せずに書いているものが多くありました。応募してきた人に「週○日在宅で考えています」と言われて、「うちは月○回しか在宅はできません」と面接後に伝えて辞退になる、という事態が実際にありました。お互いに時間のムダです。
確認ポイントは「週何日まで在宅が可能か」「在宅適用の条件(試用期間中はNGなど)」「フルリモートの可否」です。これは応募前にエージェント経由で確認するか、面接前の質問事項に入れておくことをおすすめします。
NGサイン⑥ 求人の出し方が頻繁すぎる
同じ会社・同じポジションが、転職サイトに何度も繰り返し掲載されている場合は注意です。採用担当として言うと、これは「常に人が足りていない」または「採用しても定着しない」のどちらかである可能性が高い。
転職サービスによっては、求人票の掲載日が確認できるものもあります。「この求人、3ヶ月前にも見た気がする」と感じたら、掲載履歴を確認してみてください。エージェントを使っている場合は「この求人、どのくらいの頻度で出ていますか」と率直に聞けます。
離職率の高さや、採用が難航している理由には様々なケースがあるので一概には言えません。でも、ワーママとして「長く働ける環境」を重視するなら、定着率の高さは確認しておきたいポイントです。
信頼できる求人票の特徴
危険サインばかり書いてきましたが、逆に「これは信頼できる求人票だな」と感じる特徴も書いておきます。
①数字が入っている:残業時間・育休取得率・管理職女性比率など、具体的な数字が入っている求人票は透明性を重視している会社の可能性が高い。
②ネガティブな情報も一部書いてある:「業務の性質上、月末月初は繁忙期になることがあります」「一部出張対応あり(月1〜2回程度)」など、応募者が懸念しそうなことをあえて書いている求人票は、採用ミスマッチを防ごうとしている姿勢が感じられます。
③求人票が長くて具体的:業務内容が「一般事務全般」のような抽象的な書き方ではなく、「受発注管理・請求書処理・外部ベンダーとの調整業務(電話・メール)を担当」のように具体的に書かれている求人票は、担当者がきちんと情報整理して書いている可能性があります。
[写真:求人票をノートに書き写して比較している様子]
求人票の信頼性を判断するために、私がやっていたのは「気になる求人票をエージェントに送って、実態を確認してもらう」方法です。エージェントは企業の担当者と直接やり取りしているので、「実際の残業時間」「育休取得の実態」を聞いてくれることが多い。自分で直接企業に問い合わせるのはハードルが高いですが、エージェント経由なら自然に確認できます。
▶ doda:「Women Career」機能で産休・育休取得実績のある求人を絞り込みができるほか、担当アドバイザーに「実際の育休取得状況を確認してほしい」と依頼することができます。
[アフィリンク:doda(A8.net)]
求人票の読み方について、子育て支援の求人を見極める方法も合わせて読んでみてください。
最後に
求人票は「採用担当者が書いた営業文書」です。誠実に書いている採用担当者も多いけど、無意識に都合よく書いてしまっているケースもある。私自身もそうでした。
「この求人票、なんかふわっとしているな」という直感は、わりと正しいことが多いです。具体的な数字がなく、バズワードが多い求人票は、応募前に一度立ち止まって「実態を確認する方法はあるか」を考えてみてください。
入社後に「こんなはずじゃなかった」という後悔をするのが一番もったいない。求人票の読み方は、転職活動の最初の技術だと思っています。