育休中に転職活動をする場合、一番気になるのは「給付金、どこまでもらえるんだっけ?」という質問。採用担当として人事をやってきたけど、給付金の細かい計算は、正直、人事部の給与計算の人に聞いてた。
でも、転職する立場になると、この計算は自分でしないといけない。給付金がいつまでもらえるか、転職先の入社日でどう変わるか、これらの試算によって、転職のタイミング全体が決まる。
今回は、育休給付金の計算式から始まって、転職が給付金に与える影響、そして私自身が「双子の育休給付金、実際いくらもらえるのか」を試算した結果まで、ぶっちゃけます。
育休給付金の計算式:基本のき
まず、育休給付金がどう計算されるかを理解する必要があります。
計算のステップ
ステップ1:基準となる給与を計算
育休開始の前6ヶ月間の給与平均を出します。
例:
1月給与 420,000円
2月給与 420,000円
3月給与 420,000円
4月給与 420,000円
5月給与 420,000円
6月給与 420,000円
合計 2,520,000円
基準給与 = 2,520,000円 ÷ 6ヶ月 = 420,000円/月
ステップ2:給付率を適用
育休開始から180日目まで:基準給与 × 67%
181日目以降:基準給与 × 50%
ステップ3:日額に換算
月額の給付金を日額にするには、月30日で割ります(正式には22日が基準の場合もありますが、簡略化)。
給付金の月額 = 基準給与 × 67%(または50%)
= 420,000円 × 67% = 281,400円/月(最初の6ヶ月)
= 420,000円 × 50% = 210,000円/月(7ヶ月目以降)
これが、基本の計算です。
転職が決まった場合:給付金はいつまでもらえるのか?
ここが、本当に重要なポイント。
ケース1:育休中に退職、給付金をもらい続ける場合
「新会社の入社日を決める前に退職する」というタイミングを取った場合、給付金はもらい続けられます。
シナリオ
育休開始:1月1日
前の会社を退職:7月15日(育休から180日以上経過)
新会社の入社日:未定(決めない)
この場合、給付金は7月15日以降も「就業していない状態」なので、もらい続けられます。
育休終了予定日(346日目の10月13日)まで。
ケース2:転職先の入社日が決まった場合
転職先の入社日が決まると、その日から「就業状態」と判定されて、給付金は停止します。
シナリオ
育休開始:1月1日
前の会社を退職:7月15日
新会社の入社予定日:8月1日(入社内定時点で決定)
この場合、給付金は7月31日までもらえます。
8月1日から「就業状態」になるため、それ以降の給付金は支給されません。
もし、8月1日~10月13日(育休終了予定日)までの給付金が150万円あったら、その全額が失われます。
⚠️ 給付金の損失が大きい理由
8月~10月は、給付率50%の期間です。月210,000円 × 2.5ヶ月 = 約525,000円が失われる可能性があります。
具体例:私の場合の試算(双子育休)
では、実際に「私の場合、育休給付金がいくらになるのか」を試算してみました。プライバシーのため、若干ぼやかしてますが、実際の数字を基にしてます。
前提条件
育休開始日:2026年3月21日
双子出生日:2025年12月15日(育休は約346日)
前の会社の給与:月額 420,000円(税引前)
育休開始前6ヶ月の給与:全て420,000円
基準給与:420,000円
給付率:最初の180日間は67%、以降は50%
給付金の計算
【180日目まで(1月1日~6月29日)】
月額給付金:420,000円 × 67% = 281,400円
期間:約6ヶ月
小計:281,400円 × 6 = 1,688,400円
【181日目~346日目(6月30日~10月13日)】
月額給付金:420,000円 × 50% = 210,000円
期間:約5.5ヶ月(166日)
小計:210,000円 × 5.5 = 1,155,000円
【合計育休給付金】
1,688,400円 + 1,155,000円 = 2,843,400円
※双子育休なので延長がありますが、基本ラインはこのような計算です
実は、この給付金の合計額が、家計にとってめちゃくちゃ重要。
家計シミュレーション
育休期間中の家計
育休給付金:月額 281,400円(最初の180日)
月額 210,000円(181日以降)
支出(予想)
- 家賃・光熱費など固定費:月150,000円
- 食費・雑費:月100,000円
- 保険など:月50,000円
合計支出:月300,000円
最初の6ヶ月:月280,000円給付 - 月300,000円支出 = 月20,000円赤字
7ヶ月目以降:月210,000円給付 - 月300,000円支出 = 月90,000円赤字
※ただし、保育園の利用開始(4月)で保育料月250,000円が加わるので、実質は月100,000円以上の赤字になる可能性
つまり、育休中に給付金の損失が出ると、その時点で家計がアウト。だから、給付金の計算と転職のタイミングは、本気で計画する必要があります。
転職のタイミングによる給付金損失シミュレーション
では、転職のタイミングによって、給付金がいくら失われるのか、計算してみます。
| シナリオ | 前の会社退職日 | 新会社入社日 | 給付金受取額 | 給付金損失額 |
|---|---|---|---|---|
| A:育休を全てもらう | 6月30日 | 10月14日(育休終了後) | 2,843,400円 | 0円 |
| B:150日目に転職(給付金50%期間前) | 5月30日 | 6月20日 | 2,250,000円 | 593,400円 |
| C:250日目に転職(給付金50%期間中) | 8月10日 | 8月31日 | 2,100,000円 | 743,400円 |
| D:320日目に転職(給付金50%期間後期) | 11月25日 | 12月15日 | 2,525,000円 | 318,400円 |
見ての通り、転職のタイミングで、給付金損失が300,000円~700,000円になる。この額は、家計にとって致命的です。
不正受給にならないための注意点
給付金をもらいながら転職活動することは、全く問題ありません。ただし、「給付金をもらうこと目的で、育休を取得する」というのはNGです。
⚠️ 不正受給にならないために
✗ NG:「給付金をもらうために、出産予定を詐称して育休を取得」
✗ NG:「実は働く予定があるのに、『就業していない』と嘘をついて給付金を申請」
✓ OK:育休期間中に、その後の転職活動を行う
✓ OK:育休中に転職先を見つけて、給付金がもらえるギリギリまで働かない期間を作る
重要:給付金申請時点では「その後転職する予定」を隠しても問題ありません。
ただし、転職先の入社日が決まった時点で、ハローワークに報告する必要があります。
つまり、「育休中に転職活動をするけど、給付金がもらえるまでは新しい会社に入社しない」というのは、全く違法ではない。これは、正当な「給付金の活用」です。
失業給付(失業保険)との関係
育休給付金が終わった後、別の制度として「失業保険(雇用保険の失業給付)」があります。これとの関係も確認しておく必要があります。
✓ 育休給付金と失業保険は別制度
- 育休給付金:育休中に「就業していない状態」に対して支給される制度
- 失業保険:会社を退職した後、「再就職活動中」に支給される制度
育休給付金を受け取った後に失業保険をもらうことは、基本的にできません。
(育休は「失業状態」ではなく、「育児のための休職状態」だから)
つまり、育休給付金から新会社の給与への移行が、最もスムーズな流れ。給付金と失業保険の「隙間」を作らないことが大事です。
転職先の給与と給付金の比較
転職先がどんな給与条件なら、給付金損失を「取り返せる」のか、計算してみます。
| 転職のタイミング | 給付金損失 | 必要な給与上昇額 |
|---|---|---|
| 150日目転職 | 593,400円 | 月額148,350円アップ必要(4ヶ月で回収) |
| 250日目転職 | 743,400円 | 月額247,800円アップ必要(3ヶ月で回収) |
| 320日目転職 | 318,400円 | 月額159,200円アップ必要(2ヶ月で回収) |
つまり、給付金損失を給与上昇で「取り返す」には、かなりの昇給が必要。月給150,000円以上のアップがないと、経済的には「育休を全てもらう」戦略に劣る。
最終判断:私の戦略
これらの計算を基に、私は「復職後に転職する」ことに決めました。理由は:
1. 給付金損失が大きすぎる(300,000円~700,000円)
双子育児の家計では、この額は3~7ヶ月分の生活費に相当します。
2. 給与上昇で取り返すには昇給幅が大きすぎる
月150,000円以上の昇給が必要だが、これは現実的ではない。
3. 育休給付金は「家計の命綱」
時短勤務での給与減額(月420,000円→月240,000円)を考えると、給付金の損失は許容できない。
だから、「復職して1年程度の期間、時短で働きながら転職先を探す」という戦略を取ります。その方が、金銭的にも心理的にも安定してるって判断ですね。
📝 給付金を最大化するために、育休中にやっておく実務リスト
計算式だけ理解しても、実際に給付金を取りこぼすケースは多いんです。私が人事側で見てきた「もったいなかった事例」と、自分でやって良かった準備を共有します。
① 給付金支給日カレンダーを作る
給付金は通常2ヶ月に1回、ハローワークから振り込まれます。前職の人事が代理申請するので、申請タイミングがズレると振込が遅れる。育休開始時に「次回の申請月と振込日」を人事に確認しておくと、家計のキャッシュフロー計画が立てやすいです。
② 育休延長の手続きを早めに動く
保育園に入れず育休を延長する場合、給付金も延長申請が必要です。これを忘れると、本来もらえる150〜200万円が消える。私は復職予定月の3ヶ月前に「保育園不承諾通知書」を準備するためのスケジュールを立てました。
③ 転職活動の「面接日」と「内定承諾日」をズラす
内定承諾日=事実上の入社確約日と判定されるリスクがあります。面接で内定が出ても「入社日は◯月◯日」で確定するまでは、給付金支給に影響しないケースが多い。ここの線引きはハローワークでも担当者で見解が分かれるので、必ず管轄ハローワークに匿名相談しておくのが安全です。
⚠️ 採用担当として見てきた、給付金まわりの「あるある失敗」3選
採用面接で候補者と話していると、給付金の制度を誤解しているケースが結構あります。実際に見聞きした失敗パターンを書きます。
失敗①:「内定承諾=給付金停止」と勘違いして焦って退職
内定承諾しただけでは給付金は止まりません。実際に「就労開始」した日から停止です。この勘違いで、本来もらえた数十万円を取り損ねた候補者を見ました。
失敗②:転職先に「育休中であること」を伝えるタイミングを誤る
育休中の身分を隠して内定を得ると、入社後にトラブルになります。最悪、内定取り消しもあり得ます。応募時のレジュメに「現在◯◯社で育休中」と明記する方が、企業側の段取りもスムーズです。
失敗③:失業保険と二重で受け取れると思っている
育休給付金と失業保険は同時には受け取れません。「育休が終わったら失業保険ももらえる」と計画していた人が、実際にはハローワークで断られて慌てるケース。退職タイミングと失業保険の受給資格は、別途条件を確認しておく必要があります。
💡 「給付金を諦めて転職するべき」と判断できる3つのケース
ここまで給付金を最大化する話を書きましたが、給付金を諦めてでも早く転職した方が良いケースもあります。私が相談を受けた中で「これは給付金より転職優先」と言ったパターン3つ。
ケース①:現職の復帰先がハラスメント環境
育休前から問題があり、復帰したら確実に消耗するとわかっている場合。給付金で得る数十万より、メンタルを守る方が長期的には得です。
ケース②:転職先の年収が現職より100万円以上アップ
月8万円以上の差なら、給付金損失分は10ヶ月程度で回収できます。長期的には完全にプラス。
ケース③:時短勤務制度が現職になく、転職先にはある
金額換算が難しいですが、復帰後にフルタイムで詰むより、時短ありの企業に早く移った方が、家庭の安定度は段違いです。
給付金は大事ですが、目的化すると判断を誤ります。あくまで「家計の安定」が目的、給付金は手段の一つだと割り切ると、判断が楽になります。